骨折
当院では犬猫の骨折治療に対して正確で確実な骨折整復を目指すため、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(デピューシンセス社)が開発した【LCP(Locking Compression Plate)システム】を積極的に採用しております。
動物がソファや階段でジャンプした時やフローリングで足を滑らせて転んだ時に骨折してしまうことがあります。骨が小さくもろい小型犬や猫の骨折治療は比較的難易度の高い手術です。
LCPシステムは、プレートにスクリューをロッキングさせて固定する新しいコンセプトのトータルプレート&スクリューシステムです。二次診療施設や大学病院など限られた施設でしか導入されておりません。
LCPは従来のプレートにある問題点を克服し生物学的活性を妨げにくく、骨折治療に伴う合併症(骨癒合不全・骨萎縮・再骨折)リスクを低減できる治療法です。中型犬以上、猫にも適用することができますのでお気軽にご相談下さい。
主な対象:トイプードル、チワワ、ポメラニアン、パピヨン、マルチーズ、イタリアングレーハウンドなど。
一般的な従来型プレートに比べ固定に比較的難度の高い技術を必要とするプレートですが、従来型のプレートよりも利点が多く、以下のような利点を含みます。
LCPの主な特徴と利点
1. ロッキングスクリューによる角度安定性
骨質に依存しない安定した骨片の維持が期待できます。
プレートとスクリューヘッドが固定されることで得られる高い角度安定性は関節の可動に特に優位です。
2. LCPは整復位を維持したまま変位リスクを低減
従来のプレートでは プレートに骨片が引き寄せられたり、動物の激しい動きで整復位を維持できない(元に戻した骨が再度ずれる)というリスクがありましたが、LCPは整復位を維持したままそのリスクを低減できます。
従来型
LCP
3. 骨膜上の血流の温存
プレートと骨膜の限定的な接触(術式によっては無接触)により、骨癒合に重要な役割を果たす骨膜の血流を温存することが可能になります。従来のプレートはスクリューでプレートを骨に押し付ける摩擦力によって固定力を得ていましたが、LCPはロッキングスクリューとプレートのロック(角度安定性)によって骨折部を固定するため、プレートで骨を圧迫する必要がありません。それによりLCPは骨癒合に重要な骨膜の血流を温存することが期待されますが、これがいくつかの利点の中でも特に重要です。
4. コンビネーションホール
ひとつのホールでロッキングスクリューと従来のスタンダードスクリューの使用を選択できる形状をしており、小動物の薄い骨や、多様な形態の骨折においても良好な固定力が期待できます。
ロッキングスクリューとプレートがロックする事で従来スクリューの1.4~2倍(骨質や骨の厚みに左右されます)の固定力が得られます。
症例
症例1パピヨン(一般的なLCP使用例)
術前
術後
症例2イタリアン・グレーハウンド(LCPに創外固定を併用した例)
術前
術後
5ヶ月後